どうやってあの場所を出たのか、覚えていなかった。
感覚のない足。
影を踏む遊びを無意識にしている。
影を踏む遊びを無意識にしている。
顔にかかる髪を後ろに流そうとして、指が止まった。
あの手が触れたのは髪だけではなかった。
奪われるばかりではない、甘い痛み。
耳の奥に残る声に頭の隅が痺れるような感覚を覚える。
「ふふ・・・」
不意におかしさが溢れ、口をついて出た。
あのままこの身が焼かれていれば、楽になれたのに。
熱を持て余し、息を吐く。
どうして手の届くうちに、あのひどく綺麗な紫金色の二つを潰してしまわなかったのか。
指は広い背中を彷徨うばかりで、他に役立つこともなかった。
塞がれるまでもなく、最後まで言葉を許されなかった唇も同じ。
せめてどこかしこに歯を立てれば少しは気も晴れただろうに。
すでにどうしようもない。
指先で髪の絡みを解し、虚ろに空を見上げる。
薄雲に覆われ幻のように揺らぐ光。
影は四方に淡く淡く伸びていた。
朝はまだ来ない。