015 ゆびさき  (にら)

どうやってあの場所を出たのか、覚えていなかった。

感覚のない足。

影を踏む遊びを無意識にしている。

影を踏む遊びを無意識にしている。

顔にかかる髪を後ろに流そうとして、指が止まった。

あの手が触れたのは髪だけではなかった。

奪われるばかりではない、甘い痛み。

耳の奥に残る声に頭の隅が痺れるような感覚を覚える。

「ふふ・・・」
不意におかしさが溢れ、口をついて出た。

あのままこの身が焼かれていれば、楽になれたのに。

熱を持て余し、息を吐く。

どうして手の届くうちに、あのひどく綺麗な紫金色の二つを潰してしまわなかったのか。

指は広い背中を彷徨うばかりで、他に役立つこともなかった。

塞がれるまでもなく、最後まで言葉を許されなかった唇も同じ。

せめてどこかしこに歯を立てれば少しは気も晴れただろうに。

すでにどうしようもない。

指先で髪の絡みを解し、虚ろに空を見上げる。

薄雲に覆われ幻のように揺らぐ光。

影は四方に淡く淡く伸びていた。

朝はまだ来ない。