069 冷たい夜  (にら)

しゃらしゃらと衣擦れの音に目を覚ました。

開け放したドアから風が入り込み、隙間の空いていた窓まで流れて、カーテンを揺らしたらしい。

覚醒しきれないまま身を起こす。

痺れが残る腕。

まだ温もりもここにある。

だが、もう追ったところでその姿を捕まえることはできないだろう。

プライドの高い女。

あの女は嫌いだった。

自分の唯一つの持ち物である記憶をかき乱すから。

愛しい女と印象は重なるのに、時折ひどく醜いと感じるから余計に。

あの女は嫌いだ。

深い青の瞳も。

やわらかな黒髪も。

白い肌も。

熱に浮かされたように漏らしていた吐息も。

待ち続けた何もかもが違う、と否定されるような気がして。

「くそっ」

毒づいて、立ち上がった。

カーテンを引くと、淡い光が部屋に差し込む。

暗闇に僅かに浮かんだ横顔は、歪んでいた。

そのまま空を見上げることもせず、両の手に顔を埋める。

このまま朽ちるまで、こんなことを繰り返すのか。

手の平を雫が伝っていく。

朝はまだ来ない。