しゃらしゃらと衣擦れの音に目を覚ました。
開け放したドアから風が入り込み、隙間の空いていた窓まで流れて、カーテンを揺らしたらしい。
覚醒しきれないまま身を起こす。
痺れが残る腕。
まだ温もりもここにある。
だが、もう追ったところでその姿を捕まえることはできないだろう。
プライドの高い女。
あの女は嫌いだった。
自分の唯一つの持ち物である記憶をかき乱すから。
愛しい女と印象は重なるのに、時折ひどく醜いと感じるから余計に。
あの女は嫌いだ。
深い青の瞳も。
やわらかな黒髪も。
白い肌も。
熱に浮かされたように漏らしていた吐息も。
待ち続けた何もかもが違う、と否定されるような気がして。
「くそっ」
毒づいて、立ち上がった。
カーテンを引くと、淡い光が部屋に差し込む。
暗闇に僅かに浮かんだ横顔は、歪んでいた。
そのまま空を見上げることもせず、両の手に顔を埋める。
このまま朽ちるまで、こんなことを繰り返すのか。
手の平を雫が伝っていく。
朝はまだ来ない。