014 横顔  (もぞ)

夕刻に幻獣が出現。
出動命令が5121小隊に下され、人型戦車が投入された。
途中、支援要請を受けた「きたかぜ」が戦場に到着したものの、スキュラのレーザー攻撃を受け墜落。
その破片は指揮車の頭上に降り注いだが、たまたま補給のため後退体勢にあった一番機が文字通り「手」を差し伸べてそれを阻止し、そして「腕」を故障した。
結果、戦闘は引き分けとなり、一番機に搭乗していた壬生屋は帰還早々に善行司令の叱責を受ける。
理由はただ一つ。彼女の英雄的行動を「スタンドプレイ」であると司令は断罪したのである。

それに対し、壬生屋は反論した、いや、反論しようとした。
反論しようとして一歩前に出たところで瀬戸口に羽交い締めにされ、そして善行は「私は何も聞きませんでしたよ」と言いながら悠然と小隊長室へと歩いていったのである。
「まあ落ち着け」
瀬戸口は壬生屋の赤いリボンに向かって言った。
「委員長のお目こぼしは、多分これきりだ。皆が見てる前で盾突くなよ、処分されるぞ」
「余計なお世話です、放しなさい! 不潔ですっ!」
「どうしてお前の脳みそは腐ってんだろうな、誰がお前なんかに触りたいって思うかよ」
ムカムカと込み上げてくる怒りに任せ、壬生屋を突き飛ばす。
よろけながらも壬生屋は振り返りざまに瀬戸口を睨みつけ、唇を真一文字に堅く結んだ。
いつもこうだ。
壬生屋は肝心なところで何も言わない。
何か言ってくれさえすれば喧嘩腰だろうが話し合うことが出来るのに、無言でこちらを見るだけだから、ただ苛立ちが募るばかりだ。
罵倒してやれ、とスイッチを入れたその時、小さな足音がこちらに近付いてきた。

ののみだ。

条件反射で、瀬戸口はとびきりに優しい笑顔を見せた。
ののみは不安げな表情を見せて、二人の間に割って入る。
「たかちゃん! そのきもちはめーなのよ?」
「んー? 俺は何もしてないぞ?」
「でも、でも、みおちゃんが…」
「壬生屋は放って置いてほしいらしいから、ご希望通り退散しような」
瀬戸口は軽々とののみを抱き上げる。
黒く塗りつぶされそうだった心が、一瞬にして光を取り戻した。

壬生屋を見ると、プイと横を向いている。
「…なんだよ、今度は子供相手にヤキモチか?」
「…そうですね、そうかもしれませんね」
「…ヤな女」
だが、彼女の横顔にはもう強い意志は宿ってはいなかった。
ただ、青い瞳が哀しそうに見えて、瀬戸口は逃げるようにその場を後にした。