(微エロ描写含)
目を覚ますと、甘美な空気が漂っている。
見慣れた自分の部屋。
狭い四畳半に広がる一枚の布団。
そこに横たわるのは寝息をたてる愛しい少女。
速水はしばし逡巡し、もう一度、彼女の首筋に唇を押し当てた。
滑らかな肌が再び欲情を誘い出す。
一方的な愛撫は全くと言っていいほど彼女には伝わらず、自己満足の固まりとなって彼の全てを支配する。
「好きだよ、好きなんだ」
言い訳をするように呟いて、彼女の中に入ろうと身を起こす。
拙速であることを知りつつも、己の焦りは消えることなく。
「ごめん…」
その詫びも所詮は口先だけのことだと自覚しつつ。
力を込め身を沈めると、ようやく彼女が目を覚ました。
「…なにを…」
喘ぐような声で彼女は問いかける。
速水は困ったような顔をして彼女の唇をそっと塞いだ。
「好きなんだ」
熱い吐息を落としながら囁く。
「どうしたらいい?」
「…どうするもなにも…」
琥珀色の瞳を揺らめかせ、彼女は眉根を寄せた。
複雑な感情を理解出来ない彼女は、速水の言っている意味が分からない。
「…現在進行形で…その…しているではないか…」
直接的な表現を恥じ入るように少女は呟く。
「うん…気持ちいいね」
「…たわけ…」
あとは浅く短い呼吸をするだけで精一杯なのか、少女はキュッと目を閉じた。
そんな彼女を見下ろしながら、速水の表情は苦悩のそれに変わっていた。
初めて出逢ったとき、やっかいな少女だと思っていた。
話していくうちに、彼女は自分のヒーローだと確信した。
彼女の下僕として一生を全うしたい、それだけを願っていた。
それが。
誰にも彼女の心を奪われたくないというエゴで、屋上にて告白するに至り。
そして。
本来なら触れていいはずもない彼女に、恋人という名前を盾にして、自分は欲望をぶちまけてしまっている。
こんなことが許されていいはずがない。
少女を抱くたびに速水はいつも思っていた。
しかも、コントロール出来ない心の発露によって、彼女には毎日のように「身体が痛い…」と呟かせてしまっている。
「好きなんだ、何をしても気持ちが収まらないんだ…どこまでも、どこまでも欲しくなって仕方がないんだ…」
心が欲望に支配される。
タリナイ、タリナイ、タリナイ――
その甘美な恐怖にどうしても打ち勝つことが出来ず、速水は少女の身体を固く抱きしめた。