大破した士魂号を捨て、舞と速水は補給ラインまで戻って来た。
更に後方から予備機を積んだトレーラーが派手に走り込み、二人の前で急ブレーキをかけた。
「急いで!」
原主任の声に、速水が「分かっています」と応える。
曇天の下、泥まみれになりながら、舞は速水と呼吸を合わせてハッチへと身体を滑り込ませた。
戦場では轟音が鳴り響く。
最後の一発まで射出するようプログラムを組まれた士魂号が、いよいよ自爆した音に違いないと速水は思ったが、それを口にする余裕などありはしない。
時間が惜しい。
「30秒で全部の起動チェックをする。厚志は人工筋肉のウォームアップを」
「了解」
目を見開いたまま深呼吸をした速水は、多目的結晶を剥き出しにして神経接続を行う。
一瞬、目の前に夜空が見えたような気がしたが、夢など見ている場合ではないと強い意志で目を開け続けた。
「舞、トレーラーから転がり落ちた瞬間から戦闘に入る」
「了解した」
「無茶をするよ、気を失わないで」
「ふっ、たわけが」
笑いながら舞は応えた。
移動射撃をしながら、ミサイル圏内に幻獣を誘導する。
すでに大太刀を一本しか持っていない壬生屋機が肩で息をしているように速水には見えた。
「壬生屋、いけるか?」
瀬戸口の声。
「もちろんです、大丈夫です」
「援軍到着まで、あと少しだから、だから…耐えきってくれ」
祈るような彼の言葉に、速水は軽く舌打ちをした。
「どうした厚志」
ハッとして頭上に気持ちを向ける。
「舌打ちなど…珍しいな」
「あは、余裕みせてる場合じゃないよね」
ぽややんと言いながら、速水の目は笑わなかった。
――熊本城攻防戦――ここで幻獣と対峙するのは三度目だ。
瀬戸口の言葉は、前回、前々回の戦いと一言一句変わりがなかった。
速水の知る攻防戦では、この後すぐに掃討戦に入り、援軍の到着を待たずにB区にいる幻獣は消滅する。
そして、舞が芝村的演説をして――僕にとって、ただ一人の舞は――
「僕は、舞と一緒に、ずっと一緒にいるって決めたんだ」
速水はそう呟いて、ミノタウロスの射線から士魂号をずらした。
彼が言葉を発する前に、砲手の舞がミサイルを射出する。
おそらく、何体かのミノタウロスは仕留めることが出来ないだろう。
だが、前回と違って、二人の士魂号はどの幻獣の射線にも射程にも入っていない。
これならば、今回こそは無傷で最後の戦いに挑むことが出来るだろう。
弾の残数を気にしながら、速水はキックで敵を倒す。
壬生屋も壊れてしまった刀を投げ捨て、最後はその拳で幻獣を消滅させた。
坂上からの通信が入る。
「お見事です、敵の掃討が終わりました」
「まだだ」
舞が答える。
速水の喉が渇く。
運命の第三戦が幕を開けようとしている。
今度こそ、僕は舞を護ってみせる――
そろそろ芝村的演説が始まろうとしていた。