026 抜け殻  (もぞ)

(善原前提の男×原)

この手の中に愛はない。
与えるばかりの愛情はもはや枯渇してしまって、私の心を蝕んでいる。
私への愛で苦しまないような男とは寝ない、というくだらないプライドは、彼の前では無力であった。
磁石の対極のような結びつき。
本能と言うだけ響きは良いが、実体はそこに雌雄という存在があるから交歓しているに過ぎなくて。
与え与えられる愛もないのに、私たちは繋がっている。

敢えていうなら罪の意識が、私と彼の感情を高ぶらせている。
言葉巧みに誘いをかけたこの男は、私の心に別の男がいることを知っている。
それは生涯忘れることのない――忘れるつもりのない男。
心の中に棲む忘れられない存在が私たちを快楽の渦へと落とし込む。
「あいつを忘れさせてやるよ」と嘯きながら、今日も彼は私をのみこむ。
嬌声をあげる私を見る目がひどく冷たい。
分かっている。
彼は私を抱きながら、歓喜の声をあげる私を見つめながら、ひどく失望してるのだ。
私という存在に失望する男ではない。
私を通して世の中の女性に失望して、壊れていく。
忘れられない男がいながら抱かれる私をさげすみながら、彼は私を悦ばせるのだ。

一定のリズム。
あがらない呼吸。
穏やかな心拍数。

儀式のように進められていくこの行為に意味があるのか。
――いや、大義名分も理由も理屈もどうでもいい。
あの男のいない世界に私は希望を見出せないのだから。