5月10日、月曜日。
岩田はプレハブ小屋の屋上から空を見上げていた。
全ての努力の結果が審判される日。この日のために、どれだけの時間と労力を費やしたことか。
…いや、結果ならもう出ているし、審判も下った。階下から声が聞こえる。
「芝村っ、一緒にお昼にしない?」
「わ、私は、その、べ、弁当を持たぬゆえ…」
「大丈夫、二人分のサンドイッチ作ってきたんだ」
あと少しで手に入る「彼の世界」を必死になって捕らえようとするHEROの声。
岩田は確信する。この男はそう遠くない将来に絢爛舞踏を受賞するだろう。
しかし。
祈るべき神を持たない岩田は空を見上げていた。
しかし、遅すぎた。
絢爛舞踏が生まれなければ、審判の日に間に合わなければ、この世界には未来がこない。
「また次のループを待たなくてはいけないのか…?」
全ては上手くいったのに。時間だけが間に合わない。
届くはずのない未来を掴むかのように岩田は高くジャンプした。身体は空に飛翔し、そして重力に支配される。
迫る大地を目にしながら彼は思う。
閉じられた世界に絶望はしないのだと。どこまでも努力し続けるのだと。
地面に直撃する寸前に巧みな体術で重力から解放される。
傷一つつかないダイブ。地面をクネクネと転がりながら吐血の痕跡を偽装する。
「…裏切りますよ、徹底的に…フフフ」
空を見上げながら岩田はゆっくりと目を閉じた。