5コール目で留守録に切り替わる。そういう設定。
ニーギは携帯電話の点滅する着信イルミネーションを片手に見た。
バイブにしているので、音は鳴らない。
小さな外部ウィンドウに表示されている名前をちらりと確認して、ニーギは一瞬だけ目を伏せた。
留守録に表示が変わる前に携帯をホットパンツのポケットに突っ込む。
顔を上げると、そのまま跳躍した。
ビルの谷間から吹き上げる風にコートをはためかせながら、軽いステップで火花を散らしビルからビルへ移る。
ニーギは月に向って吼えたくなる気持ちが分かるような気がした。
彼は、自分を拾ってくれた。
ちょっとのびていたけれど、でも、湯気があたたかいカップヌードル。
それから、狭いけれど冷たい風をさえぎる寝床をくれた。
定期コールを欠かさない銀色の無精ひげ。
生きている事が分かるなら、声は聞かなくていい。
想いは、そのまま振るう力に変える。
勝手でごめん。でも、それが私の生き方だから。
ねえ、世界を渡ってもこうして繋がる事ができるのはどうしてだと思う?
携帯電話をくれた世界を越えるお人好しの顔を思い浮かべて、ニーギは少しだけ笑った。