「舞。目、瞑って」
「いきなり何だ」
その日、ひょこり現れた速水に開口一番言われた舞は、間髪入れず無表情を返した。
「朝からそなたの姿を見なかったが、何をこそこそやっている」
「まあ、まあ。いいから。目を瞑って」
腕を組んで踏ん反り返る舞に、やはりいつものとおり笑顔のまま速水が言う。
こうなるとぽややんのねばり勝ちになるのは目に見えている。
舞は追及を早々に諦め、目を瞑った。
いつも隣にある顔がなかった今日は、なんだか落ち着かなかった。
さっきまでは、会ったら何と言おうかと考えていた。
それでも、今近くにあるからいいかと思えてしまう。
やはり、これは惚れているのか・・・?
微妙な時期なのだった。
それはともかく目を閉じる。
そうすると気配が鮮明になって、何だか気恥ずかしい。
それでもそのままでいるのは、ああ、やはり気を許しまくっているのだろう。
ごそごそと紙袋の中から何か取り出している音。
ややあって。
「舞、口開けて」
「何だと?」
怒気を含んだ声。
目を瞑らせて、さらに口を開けろだとーーー!
そんな間抜けな事ができるか。ばかもの!!
「はい、あーん」
そんな内心の声も、無邪気な速水の前には飲み込まれてしまう。
「・・・・・・」
結局言われるままに、舞は口を開ける。
すると、クッキー大のクッキーよりは厚めの食感のものが口に放り込まれた。
「・・・・・・・」
「おいしい?」
黙って口をもぐもぐとさせる舞に速水が訊く。
「うまい」
律儀に目を閉じたまま、舞は頷いた。
「何でしょう?」
「芋か?」
「あたり」
目を開けて、という声に見ると、速水の手の平の紙ナプキンの上いっぱいに小さな丸い焼き菓子があった。
「スイートポテト。オリジナルでチョコレートを入れて焼いたんだ」
「そなたが作ったのか?」
「うん」
速見は頷くと、狐色にこんがり焼けたその一つを手に取った。
また口を開けてと促す。
何でもないことのようにしているが、材料を揃えるだけでも大変だっただろう。
きっと朝から走り回って手に入れたのに違いない。
素直に舞が口を開けると、うれしそうに微笑んだ。
この笑顔には本当に弱い。
「甘い?」
顔を覗き込んで訊かれるのに、不本意ながらどきまぎする。
「うむ」
もぐもぐと食べながら頷くと、不意にキスをされた。
「あ、うん、おいしい。我ながらよくできてる」
「~~~~!!そなたっ、な、何を」
「何って、味見だけど?」
それ以外の何が?と言うのに、だまされないぞと思う。
「私で味見せず、それを食べればよかろう!」
手の平の上のスイートポテトを指差す。
舞がふるふると(怒りと恥ずかしさで)真っ赤になって震えているのを、惚気脳でホントにかわいいなぁと思ったのかは知らない。
速水はやはりいつものとおりにっこり笑った。
「だって、これ舞のために作ったんだよ?舞に全部食べてほしいから」
舞は、だまされないぞと思う。
「舞、誕生日おめでとう」
ぽややん全開の笑顔。
で、今日も結局丸め込まれてしまう舞姫なのだった。
(あとがき)
放課後のハンガーにて(笑)、一風景・・・か?
「お前ら。ちったぁ、場所考えろ!」
特に速水!!
全員で内心で思ったが、やはり最強カップルには誰もかないませんvv