今日の戦闘で、友軍のひとりが、
あっちゃんをかばって死んだんだって。
あっちゃんはそれを、とても、とても悲しんでいたの。
「僕がもっとちゃんと気を付けていたら、あの人は死なずに済んだんだ」
いつも笑ってるあっちゃんの悲しそうな顔。
それは見てるだけでまいの心も痛くなるの。
「僕のせいなんだ。あの人が死んだのは…」
こんな時、まいはどうしてあげたらいいの?
分からない。けど、あっちゃんには、そんな顔をしてほしくないよ。
「僕のためなんかに死んだなんて……」
泣きそうなあっちゃん。
でも、まいはただ首を横に振るだけ。
今のまいには何も言ってあげられないの。まだオトナじゃないから。
「舞、僕はあの人に、どう謝ればいいんだろう?
あの人には、きっとあの人の帰りを待ってた人がいたと思う。
きっと許されないよ。あんな不注意じゃ…」
そう自分を責め続けるあっちゃん。
けど、それはちがうよ。
まい、たかちゃんから聞いてるもん。
あっちゃんが悪かったんじゃないって。誰かが悪いんじゃない。
あれじゃあ仕方なかったんだって。
「恨まれて当然だね。あの人には、あの人の未来が待ってたはずなんだ。
なのに、僕がそれを壊したんだから」
思わず、あっちゃんにぎゅっと抱きついた。
もうそれ以上、言わないで。
あっちゃんは悪くない。悪いのはこんな時代なんだよ。
その人だって怒ってないよ。
その人は、あっちゃんを助けたいって思ったんだよ。
「僕のせいだ…」
いつもより、まいを抱きしめる腕に力がこもってた。
いつもより、ぎゅっとされた分だけ、あっちゃんの悲しみがまいに伝わる。
あっちゃんを恨まないで。
怒るなら、まいを怒って。
心の中で、その死んだ人に一生懸命謝る。
ごめんなさい。
まいは嬉しかったの。
あっちゃんをたすけてくれてありがとう。
あっちゃんがまいのところに帰ってきてくれるんだったら、
他の誰が死んでもいいって思ってるの。
たとえ、世界中のみんなが死んでも、
あっちゃんさえ生きてくれてたらいいなって思ってる悪い子なの。
だから、あっちゃんを怒らないで。
怒るならまいにして。あっちゃんを許してあげて。
でも、あっちゃんはずっと苦しそうなままで。
だから、まいは、力いっぱい、しがみついた。
あっちゃんのほっぺに、まいの顔をくっつけるくらいに。
――それは前に聞いた魔法。
元気の出る魔法だって、もとこちゃんがそう言ってたから。
でも、思ってた場所とは、ちょっとずれちゃって。
ちょっとびっくりしてまいは顔を離した。
あっちゃんは、一瞬舞を見て。
それから少し遅れて、ちょっとだけ笑顔を見せながら、まいに言った。
「……舞に未来を残せたら、あの人も許してくれるかな?」
うん。
頷くと、あっちゃんはまたまいをぎゅーしてくれた。
「ううん。許されなくても、でも、僕には頑張るしかないなんだ。
そうじゃなきゃ、あの人も納得出来ないよね。ごめんね、舞。心配させちゃって」
首を振りながら、まいは思ったの。
これって、魔法が効いたのかな?
よく分からない。
だって、あっちゃん、気付いたのかな。
何も言わないから分からないよ。
でも、あっちゃんが元気になってくれたから。
あっちゃんが笑ってくれるなら、まいは何度でも魔法をかけてあげる。
今、気付いてくれなくても、いつか、それに気付いてくれればいいから。
「そうだよね。僕には舞がいるんだ」
あっちゃんは、まいを抱き上げると、まるでこの世界を見せるように、一回りした。
「舞のために、もっともっと良い世界を作ってあげるからね」
あのね、あっちゃん。
いつか、あっちゃんもまいに同じ魔法かけてくれる?
それだけで、まいはとってもとっても元気になれると思うんだよ?
それはあっちゃんにしかかけらない魔法。
あっちゃんがまいに元気をくれるの。幸せをくれるの。
あっちゃんの腕の中で、まいはそう思ったの。
それがまいがほしい世界なんだよって。