透明の檻の中にいる。
はじめに見たときは、これが生き物なのかと思った。
白濁した液体の中。
まとわりつく様々なチューブと交わる髪をかき分けるようにして、それは手を伸ばした。
見えてはいない。ただ気配を感じてだろう。
手は、外界を遮断するガラスにはばまれる。
憐れに思えて、手を合わせるようにガラスに触れると、それの唇の端から泡が漏れた。
――彼女は、笑ったようだった。
***
「今日の成果は上々でしたね」
ドアをくぐると、男がいつものようにいた。
張り付いた笑みもいつもどおり。
瀬戸口は男の言葉には応えず、ただ手を伸ばした。
男の笑みが深くなる。
「またよろしくお願いしますよ。我々の計画のために…」
耳障りなどこかに擦れている声で言う。
そして、くく、と喉の奥をならし、無造作に服から取り出したものを手渡した。
「人間と、幻獣の勢力均衡のためには、貴方の存在が必要です」
存在の必要性・・・か・・・
益体もない。
心に掛かるものはこの手からすり抜け、失っていくばかりだ。